会報
会報第22号―――2005年3月14日発行

ことば「尾閭対足跟」

薛永斌

交流活動

「太極剣を練習して」

森美恵子

「急がず、止まず」

橋本洋一


ことば

薛永斌

尾閭対足跟

 姿勢をよくするためには、下半身の安定が重要です。
 初心者が練習するとき一般的に、お腹が前へ出たり、後ろにお尻が出たりするという傾向があります。
 そういうとき下半身は不安定になり、体は緊張してしまい、姿勢は崩れます。
 この問題を解決するには、尾閭対足跟という姿勢のポイントがあります。即ち尾てい骨と足の踵の相対関係です。
 下半身が馬歩のとき、尾てい骨からの垂線は、両足の踵と踵を結んだ線の中間にあります。
 弓歩のときは尾てい骨を後ろの踵に合わせます。足の踵、尾てい骨、後頭部の三点が、弓歩の場合は斜線、坐歩と馬歩の場合は垂直線にします。
 尾てい骨と踵の位置関係は下半身の重要なポイントです。


交流活動

樹林練功会
 
日曜日の午前10時から11時まで、東京都代々木中央広場噴水池付近の樹林にて養生法十二法と太極24式を練習します。
  昨年11月21日には第100回の樹林練功会を迎えました。
 今年の予定は4月3日(第101回)、6月5日、7月3日、9月4日、11月20日です。無料、自由参加、雨天中止。ぜひご参加ください。

2004年11月21日(日)紅葉の代々木公園にて
第100回樹林練功会 

第100回樹林練功会

「太極剣を練習して」

森美恵子さん相模原教室
 森 美恵子


 前にいる相手をねらい、そのまま180度後ろの相手に向き直り、相手の膝をはらいながら回り込み、その勢いで相手の剣を上に持ちあげてしまう。イメージは膨らみ、套路が頭の中を駆け巡る...。
 昨年の4月から、太極拳に通じ、護身のために役立つ武術として、明大前本部道場で剣研修会が始まりました。
 私は、太極拳を練習するようになって、太極剣を知りました。剣法は長い歴史の上に、綿々と伝えられ守られてきた奥の深い術です。門派により多少の違いはあるものの、華やかな表演(試合用)の動きに魅せられ、いつかはやってみたいと思っていました。


剣は手の延長

 教室では、無極静功の剣は実用性と動きの美しさのバランスを求めるようにと、先生は必ず用法を見せながら動き(套路)を、教えて下さいます。技をイメージしながら軽やかに動くように、そして、剣が手の延長のように自分のパワーが剣先に届くようにと、要訣を一つ一つご指導下さいます。
 月1回の練習は、武器(剣)を持つことで姿勢がよくなり、思わず張り切って、非日常的な大きな動きに、にこにことみな楽しそうです。そして活き活きしています。
 剣四八式の中前後穿剣では、相手に自分の剣の動きが分からないように、体の部位(手や足の近く)に隠しておき(蓄勁)、その勢いで相手の隙をついて刺します。


身剣合一のバランス

 始めはぎこちない動きで套路を覚えるのに一生懸命でした。くり返すうちにだんだんと自分のパワーが剣の先に届くような、集中力のある素早い動きが出来るようになります。激しい動きやゆっくりとした動きが自然にきまると気持ちがいいものです。
 虚領頂勁、含胸抜背、沈肩墜肘、掖胯斂臀の姿勢は太極拳と同じように要求されます。身、手、歩法の成熟された動きは、腰を主宰にして、身剣合一のバランスが大事になります。
 四両千斤を撥く、柔より鋼を制するといわれる太極拳の時も、推手を学んで太極拳の動きが理解できたように、太極拳の動きがあって、より太極剣が理解できました。
太極剣  しかし、太極剣は視覚で相手を観察する点も重要とされると思いました。太極拳は聴勁で相手を知ってから、化勁しても遅くはないけれど、「人不知我、我独知人」で、剣はより早く、その変化を感じて、まっすぐ相手を刺す武器術だと思います。
 剣には、直線にのびる鋭さがあります。闘いにおいては、相手の武器を受け止めても、確実に剣の正しい型(使い方)を理解しなければ、一瞬で命を落とすかもしれません。まだ剣身の両面に鋭い刃のある剣は、相手と対する前に己を傷けてしまう難しさも知らなければなりません。常に相手の身、眼、手、歩そして動き(剣)を意識して、その変化に対応するように練習をしなければ、体の使い方の技は身につかないと思います。
  現実に多様な武器を利用して自分を守れる点では、腕力のない女性の護身に最適なのです。

剣指の妙味

  初めて剣を手にしたとき、その重さが微妙に感じられました。でも左右のバランスを取ったり、剣の動きと調和するように、左手で剣指(剣訣ともいう)をつくります。動作に合わせて、横に伸ばしたり、頭の斜めにあげたり、剣を持った右手に添えて体のバランスを整えます。そして、その剣指には、相手を惑わせたり、時には相手の点穴を突く意味もあることを聞いたときは驚きました。宮本武蔵の二刀流のように、動きの一つ一つに激しい兵器として実用されているからです。
 まずは套路練習です。正しい動きから、バランスを確認しながらの練習が大事です。剣の型を覚え、その要求を理解して、護身のための武術として攻防が出来るようにしたいという目標ができました。無駄のない、美しい自然な動きになるように稽古です。
 柔よく剛を制すと言われるこの言葉は、心身のバランスが取れた時に成せる技なのです。
 動静虚実の変化を知り、真実の拳法を理解できるように続けていきたいと思います。

「急かず、止まず」

内山隆さん本部土曜日午後教室
橋本 洋一

きっかけ

 私はソフトウェアの受託開発を仕事としているため、長時間座っていることが多く、常々腰痛と肩こりに悩まされていました。マッサージに度々通っていましたが、その時必ず指摘されるのが運動不足。マッサージに費やすお金も少なくないし、どうせなら以前から興味のあった太極拳を習いに行こう、とインターネットで見つけたのが無極静功でした。
 初めての練功は、とても心地良いもので、自分の体が喜んでいる、という感じでした。しかし、徒歩での帰り道、自宅まで数十メートルというところで、足がもつれるほどの疲労を感じ、日頃の運動不足と体力低下を痛感しました。
 2度目からはそれほどの疲労を感じることはありませんでしたが、練功の後は帰宅してうたた寝、という状態が2〜3ヶ月ほど続いていました。

研修会への参加

 なかなか要領を得られないまま1年以上が過ぎた頃、理論研修会に参加させていただく機会を得ました。月2回、半年間の研修でしたが、内容の濃い、有意義なものでした。
 とりわけ記憶に残っているのが、大転環の実技指導のときのことです。この頃教室に通うようになって既に2年近く経過していたのですが、未だ、左右の腕が一本につながる、という感覚が全くイメージできずにいました。
 自分なりに模索してはいるものの、どうにもぎこちない動きになってしまうので、苦手意識に近いものすら懐いていました。ところが、研修会の実技で大転環をやっている最中、いつもより滑らかに体が動いていることに気づきました。
 研修会が終わってから薛先生に「今日の動きは良かったですね。」といっていただけたので、自分でもいつもと違う感覚だったことを伝えると、「続けていれば、自分自身に生じる変化が感じられる、そういうときが来るんです。」と先生はおっしゃいました。
 この言葉は、今でも深く心に残っています。もし成長に行き詰まりを感じることがあっても、この言葉を思い起こし、無理せず焦らず継続することが第一。そう考えています。

最近思うこと

 昨年、コンサルティングの考え方を学ぶ、という目的で社内の研修に参加する機会がありましたが、この時に「全体最適化」という言葉をキーワードにして説明がありました。
 依頼者(企業)の業務改善を考えるときに、業務の一部を改善することより、組織全体のパフォーマンスを上げることを考えることが大事だ、という趣旨の話でしたが、その時(不謹慎にも?)思ったのは、「これは太極拳の考え方と似ているな」ということでした。
 体の一部を力ませたり、負担をかけたりせず、体全体のバランスを保ちながら身体のパフォーマンスの最適化を図るということと同じではないかと。
 練功を行っているときに、体の一部が力んでいることに気づくことがあります。これが推手に出てしまうと、相手の攻撃をまともに受けてしまうことになりがちです。そんな時、「全体最適化」というキーワードを想起して調整を図るよう心がけています。
 もう1つは「内面的な強さ」について。この言葉を時折聞きますが、それは一体どういうものなのか、ということに思いをめぐらすことがあります。推手の時にいつも指摘されるのは、力に力で反応せず、相手の為すがままにもせず、相手の動きに合わせて攻撃を回避するということですが、これがなかなか実践できません。
 研修会で用いている資料の中で走化勁の説明に「その切っ先を避けるだけで、注意深くその動向を見守り、その隙を探すのである。」という文を見つけたときに、ふと思ったのが、内在する、あるいは外的要因から誘起されるネガティブなもの(恐れ、不快感)をただ闇雲に退けるわけでなく、また放置するわけでもなく、冷静に注意深く見つめる、そのように姿勢を表現しているのだろうか、ということでした。
 これもまた、考察を続けていけば、より正確な理解に達することができると信じ、これからも焦らず気長に努力していきたいと思っています。

推手の練習


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