会報
会報第14号―――2000年9月27日発行


ことば「静」


薛永斌

交流会


「無極静功との三年間」

辰巳和子

「気功は私の生涯のリラクゼーション」

東谷恵子


ことば

薛永斌

気功はよく"静功"と言われています。"静"とは動きがゆったりしていることだけでなく、意識が穏やかで集中していること、いわゆる"入静"状態のことです。
瞼を緩め、目を"半眼"状態にし、鼻先をお臍に向け、気持ちを"丹田"におきます。
雑念を払い「外部に向ける意識の働き」である"心"を、「自分の体内でコントロールさせる意識の働き」つまり"意"に転化させれば、気持ちは落ち着き、集中力は高まります。
その時、体の動きの変化や気の感じがわかりやすくなり、"静"と"動"のバランス――つまり"静"の中に"動"があり、"動"の中に"静"がある状態を感じやすくなります。
自分の体の状況を把握することで、全面的なバランスと調整を行うことができるのです。
また"静"を深めれば深めるほど、内気は活発になり、細かく形の調整ができ、もっと気分は楽になります。この状態が健康に繋がります。

「無極静功」という名前の"静"はこのことをいいます。

春合宿/2000.4.15-16

春合宿/2000.4.15-16


交流会

第15回交流会は5月20日(土)午後1時半〜4時半、新宿スポーツセンター大会議室で行われました。日本大学花沢成一教授が「フィギュアスケート選手のメンタルトレーニング」というテーマで講演されました。


質問に答えられる花沢教授

第15回交流会/2000.5.20


無極静功との三年間

辰巳和子さん東京都狛江市
辰巳和子

「老い」を感じて

新星日響合唱団の団員として十余年、サントリーホール、芸術劇場を拠点に、年間四〜六回の公演活動、厳しい練習に加えて、本番前の指揮者合わせ、オケ合わせ、ゲネプロ、と連日連夜のハードスケジュールをこなす日々に、楽しさと、充実感を味わっていました。ところが、還暦を過ぎた頃から、私の耳鼻科通いが始まったのです。秋口から春先まで続く鼻詰まりと喉の炎症、寝苦しさと、喉の痛みを、早く治したい一心で、医者の指示通り、三種類の薬を飲み続け、更に、コンサート間際には、トローチ等での一時凌ぎを繰り返しながら二度目の冬を迎えました。
目に見えて衰えて来た体力、身体が妙に薄寒く感じるのを、当時は、薬の副作用とは気付かず、全てを「老い」の始まりと思い込み、暗く寂しい気持になっていました。
無極静功に入門したのは、三年前の丁度そんな時でした。

入門

健康に良さそう、歳をとっても出来そう、程度の認識で、「気功」は全く未知の世界でした。とにかく、続ける事だけを目標にしました。
「形」や「動き」が、自己流にならないように、練功は練習日のみ、いつかは、一人でも出来る日が来る、と無欲、自然体、マイペースで始めました。
やがてその年が暮れ、春から初夏になる頃には、どうにか十二法、二十四式を家でも練功出来る様になっていました。
そんなある日に「耳鼻科に行っていない」事に気が付いたのです。薬やマスクとも縁が切れています。そして鼻はすっきりです。驚きました。思い当たるのは、無極静功しかありません。大きな喜びと感激でした。

研修会に参加

気功には、理論の勉強が大切と思い、二年を過ぎた昨年、第十一期研修会に参加いたしました。
宇宙、生命、気、自然等、膨大な中身、三千年の歴史の中で脈々と培われた養生法、またそれが、人生の永遠の課題とも云うべき仏教や哲学に根差したものである事など、圧倒されるばかりの奥深い内容は、私には大きなカルチャーショックでした。
しかし、初心者としては、取りあえず「形」が如何に重要であるか、また一つ一つの「形」や「動き」が全て理論に裏付けられたものである事を知った、大変有意義な体験でした。
薛先生の「正しい形は一つ」、というお言葉の重みを改めて再認識すると共に、先生の模範演技の美しさ、流麗な動きの見事さを、それまで以上に感じるようになりました。
また、中国医学と西洋医学との根本的な違いや、「気功」と「歌」に於ける、立ち方、姿勢、頭の位置、呼吸等の共通点、そして全く対照的な点など、大変興味深いものがありました。

復活

その後「形」や「動き」を少し意識出来る様になり、「正しいもの」に一歩でも近付きたい気持ちで毎日練功を続けるようになりました。毎回の「動作の訂正」では、いつも大きな刺激を受けています。その甲斐あってでしょうか、二年を経た秋には、親譲りの低血圧が初めて正常値となり、以来、安定しています。そして三年を過ぎ、今年五月の検眼では、眼鏡を作り替える度に落ちていた視力が、二年前のそれより一段階よくなっていたのです。検査の方が「特に右目にパワーがありますね!」と驚かれました。
マーラーの「復活」を唱う;新星日本交響楽団第125回定期演奏会よりそう云えば、このところ、腰痛もありません。合唱活動も途切れる事なく、五月には、二日続きに定期公演でマーラーの「復活」を唱いましたが、過去の二度に比べ、音域が僅かながら広がったような感じがします。正に「復活」でした。七月には、バッハの大作「マタイ受難曲」と、大きな感動を味わうステージが続きました。
薬で自然治愈力の芽を摘み、「老い」をただ怖れていた三年前とは、心身共に違う「自分」を感じる今、無極静功と、先生のご指導に唯々感謝申し上げます。これからも万里の長城を目指す蟻の如く「五心」*を胸に、一つ一つ理解を深めながら「形」も「心」も、限りなく「円」に近付きたいと念ずる今日この頃です。

「五心」*とは、無極静功練習の心構えの「誠心」、「信心」、「虚心」、「恒心」、「悟心」のことです。


気功は私の生涯のリラクゼーション

東谷恵子さん東京都西多摩郡
東谷恵子

私が気功という言葉を知ったのは、七年ほど前からです。
コンピュータ関係の仕事のため、毎日がキーポードとにらめっこの生活でした。目の疲労に体の不調が重なり、しだいに体調を悪化させました。
体を重く感じ、また考え方も否定的になり、日々の生活に喜びを感じられず、生きるってどういうこと……と考えるようになりました。
そんな時に新聞広告で医療気功と一指禅功のことを知り、また中国・上海に行くチャンスがあって気功の面白さを体験をし、気功に興味を持ち始めたのです。

仕事を辞める

仕事を辞め、心にゆとりが出始めたある日、車を運転していると、目の前に、夕陽が空一面に輝いてます。
「ご苦労さま、疲れたでしょう」という声が、私の心に染み込んでくるように感じられ、どこからともなく、涙が湧いてきました。今まで緊張していた弦が緩み、その日を境に、空、雲、月、星、草花、葉の上の一粒の水滴さえが素晴らしく輝いて見え、心の扉が開き始めたように、地球の全て、宇宙の事、自分はなぜ生きているの、前世は、今世のテーマは、人間はどうして病気になるの……。色々な事を考え、色々な本と出会いました。
森の中での三時間の站椿功(馬歩站、羅漢功など)を日課にして一年、練功だけでは、もの足りなさを感じ、日本気功協会の基礎講座を一年間受講しました。医療現場に長い間携わっていらした医師であり気功師である老師の医療気功治療のお話は貴重なものでした。
その時に同じ受講生だった灰原さんから無極静功のことをお聞きしたのですが、護国寺では遠くて通う事が出来ず、その時は諦めてしまいました。
私は以前から、気功事典という本で紹介された「無極静功」に関心を持っていました。一つは指導者を育成しているという点、また、後で知ったのですが、長い経験のある生徒さんが多いという事にも惹かれました。
きっと良い師なのではないかと予感したのです。
それから九ケ月後、明大前に道場が開設されるとの吉報がありました。

無極静功を体験する

初めて私が、無極静功を体験したのは今から三年前、明大前に道場が出来た六月です。
養生十二法の一つ一つの動作を終えると背中にピリピリと、細かくて柔らかい電流が走るような、心地良い感じがあります。
「回転運気法」では小さなボールを自分のように思い、やがて大きな自分になり、そんな自分が地球を動かしているような、動かされているような溶け込んだ感覚。
また「白鶴展翅」には自由に空を飛び舞うような感覚があります。
どの動作もエネルギーは異なりますが、とても楽しく、終えた後の充実感に何とも云えない素晴らしさがあるのです。
練習を始めて一年くらいは、精神的に解放されたせいか、功法の説明の時には無性に眠くなってしまいました。
また、養生十二法も太極二十四式もなかなかうまくいきませんでしたが、今日はここ来週はここと、一つ一つ覚え、どうにか組み立てられるようになりました。

推手の楽しさ

昨年の夏、御岳山合宿に初めて参加。月曜初級教室では見た事もない、太極一〇八式、単推手、双推手の定歩、活歩など……無極静功の功法の豊かさに驚きました。
課題も多いけど、私にとって衝撃的で楽しい合宿でした。
これまでの気功は自分との対話でしたが、相手と自分との心と力の対話が求められる推手の、しかも初めての体験では只々戸惑うばかりでした。
しかし一方、自分の意外な一面を発見することができました。
単推手の練習;推手を練習すると、足の裏に沸々とエネルギーが湧き、腰を回転させ、丹田を通り指先へ流れ、力強いもう一人の自分が生まれ、困難なことに打ち勝てる感覚になるのです。もしかしたら私って武術が好きなのかな…。
『真綿のような柔らかさと、鋼のような強靭さとを併せ持ち、傷つかず、傷つけずして、勝利を収める――無極静功太極拳』
以前、武術の本で見たこの言葉がとても印象的に心に残ります。
本当に相手を思いやる武術なら私も習得したい。

学ぶ事の豊さと充実した練功、また先輩にも恵まれ、これからも楽しみの多い日々になりそうです。

多謝


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